Infuse Location www.infuse-location.com
自動車で新しい土地に向かう際に、カーナビを使わないなどということは今や想像もできない世の中である。だが、屋内ではどうだろう。Infuse Locationは、屋内の、層に分かれた位置認識を、スマホによる簡単なマッピングとアプリだけで可能にする技術を生み出した。
Infuse locationは、2016年にオレン・ロゼン氏とドゥディ・ヴァインシュタイン氏によって設立された。二人は高校卒業と同時にイスラエル軍の学業エリートコースに選ばれ、テクニオン工科大学にて工学の勉強中に知り合った。Infuse Locationの技術を使えば 、Wi-Fi や地磁気、ジャイロやGPSなどのデータを総合して、多層に分かれた屋内の位置情報を高精度(誤差3メートル未満)に測定することができる。事前にスマホを使った簡単なマッピングを行うだけで、専用機器などの取り付けも一切不要だ。
Infuse Locationのこの技術は、日本の商業施設での実践利用の開発に、リクルートテクノロジーズが乗り出している。商業施設内の客の動きをデータとして分析するだけでなく、客の位置情報を利用してプッシュ通知を送付するなどの技術の実用化を検証中だという。
Infuse Locationはさらに、身体的なハンディキャップを持つ人々の利用のためにこの技術に開発を加えた。例として、音声による位置認識だ。体の向きを変えただけで目の前に何があるのかを音声で知らせる様子は、携帯電話がしゃべる盲導犬にでもなったようなイメージである。また、車椅子利用者専用に位置測定を設定すれば、階段や段差のある通路を避け、スロープやエレベーターを利用して目的地に到達するよう自動的に案内してくれる。そのほかの用法として、一人暮らしの高齢者の屋内での動線データ分析による安全管理などが検証されている。
現在、イスラエルでは一部の学術施設及び商業施設での実践利用が始まっている。屋内位置測定の技術は、世界のいくつもの大企業がこぞって開発を試みていたが、特殊な機器の取り付けを必要としたり、精度が低かったり、利用者側に負担があったりと、問題が多かった。ロゼン氏は言う。「共同創始者のドゥディは、コンピュータを内蔵して生まれてきたような人だ。僕の使命はこれを広め、この技術によって世界の不便を便利に変えることである。日本の皆さんにも、この技術を様々な場面で活用していただきたい。」
イスラエルスタートアップの屋台骨であるテクニオン工科大学の若き秀才たちがしのぎを削って開発した技術。彼らは常に一歩先の世界を見据えて、さらなる発展を目指していることを実感した。
株式会社レジェンド・パートナーズ イスラエル在住エディター 中島直美
